塩沢紬が誕生するに至った歴史
新潟で生まれた塩沢紬は、奈良時代には既にその原型が出来上がっていた歴史深い織物であり、多くの女性のみならず男性にも人気がありました。
塩沢紬の誕生
古い歴史を持つ織物は多くありますが、塩沢紬にも古い歴史があります。
1200年前の奈良時代にこの塩沢地方でおられた麻布が朝廷へ献上された記録があり、今でも幾つかは正倉院で厳密に保存されています。
この当時は苧麻と呼ばれる種類の麻を利用して織られていましたが、江戸時代中期、技術はそのままで生糸を利用した絹織物へと変化します。
これが塩沢紬、あるいは本塩沢と呼ばれる織物が誕生した瞬間であり、塩沢紬にとっての歴史の転換期でもありました。
朝廷や幕府に献上され、強いシボの特色と独特のシャリ感は当時でも新しく、人気の織物とされていました。
独特な織技術
塩沢紬の特色は何と言ってもその強い「シボ」であり、我々の査定の際にもポイントとなります。
シボ加工とは布や革などに物理的な皺模様を付ける事であり、古い歴史を持つ技法の1つです。
塩沢紬にはその技術が古くから用いられていました。
ではその技術はどのような物でしょうか。
塩沢紬がシボを出す方法として編み出したのは、横糸に強烈な捩りを加える事です。
そうして織り上がった生地をしっかりと湯もみする事で、横糸が元に戻ろうとする力を利用します。
出来上がった生地には横糸によりシボが加わり、独特の風合いも加わります。
塩沢紬の歴史を紐解くと、生糸ではなく麻を利用していた頃からこの技術が利用されており、古代から脈々と技術的な歴史を受け継いでいる事が伺えます。
当時の女性に人気が出た理由
連綿と歴史を繋いできた塩沢紬は現在、伝統工芸品に指定されています。
着物を着る事が少なくなった時代とはいえ、それでも塩沢紬は着物の素材として人気が高いだけでなく、歴史の重みと落ち着いたデザインや色合いは年配女性に多く好まれています。
また、着物だけでなく、バッグや小物入れ、雑貨などにも利用されており、これらは若い女性に人気があります。
着物が一般的だった江戸時代においてはどうでしょうか。
生糸で織り上げられた特徴的なシボ加工と、シャリシャリとした触り心地は当時でも珍しく、女性のみならず男性にも人気のある素材でした。
深い歴史を持つからこそ培われた技術があり、もしも塩沢紬をお持ちなら、その塩沢紬にもその粋が詰まっていると言えるでしょう。
塩沢紬を知ろう
塩沢紬とは歴史ある伝統に裏打ちされた、確かな技術で作られる知る人ぞ知る、新潟の絹織物です。
その特徴とはどんなものか、塩沢紬をより深く知りましょう。
塩沢紬とは
塩沢紬とは、麻織物の「越後上布」の伝統技術を絹織物に取り入れた織物です。
新潟県で江戸時代に始まりました。
特徴として、生地に真綿特有のふんわりとしたやわらかさが織り込まれており、非常に暖かい織物です。
生産反数が非常に少なく、「幻の紬」とも言われることがあるほどで、その品質の高さから何世紀にも渡り人気がある、日本の世界に誇るべき、伝統文化の一つでしょう。
1975年に経済産業大臣指定伝統工芸品と成っており、2009年にユネスコ無形文化財に指定されています。
塩沢紬の特徴が評価されたのでしょう。
次に塩沢紬の具体的な工法、特徴を見ていきましょう。
塩沢紬の特徴
塩沢紬の特徴としては、縦糸に生糸・玉糸、横糸に真綿手紡糸を使用します。
そこに絣糸を一本一本合わせながら織り上げられていきます。
絣糸とは、前もって染められた糸のことで、この絣糸を織り込んでいくことにより、文様を現していきます。
塩沢紬では、手摺り込みによる絣糸を使い、蚊絣、十字絣、亀甲絣といった特徴的な絣模様が表現されます。
紺などの暗めの色調の地に絣が見られることが多く、その精巧な出来栄えが、見る人の心をつかみます。
また、塩沢紬の最大の特徴として、真綿のふんわり感が、触り心地がよく、優れた技法を証明しているかのようです。
技術の背景
塩沢紬の発祥の地である三国街道塩沢宿は、悠久千年の織物の故郷です。
歴史的な特徴として、塩沢紬の親とも言える越後上布は、奈良時代にこの地域で織られた良質な麻織物が税として、東大寺の正倉院に納められたそうで、今でも保存されています。
これは1200年以前より塩沢地方において上質な麻織物が生産されていたことが推測され、いかに長い歴史を持った文化であるかということを示しています。
長年引き継がれた伝統技術によって作られる塩沢紬は、特徴的な絣と肌触りによって、今なお見る人の心を掴んで離しません。
きっとこの特徴と伝統はこれからも長く引き継がれていくでしょう。
伝統技法によって作られる塩沢紬とは
日本には着物に関する伝統技法が数多く残っています。
日本三大紬と呼ばれる大島紬、結城紬、塩沢紬もその一つです。
今回は、特に着物愛好者の中で人気の高い塩沢紬についてご紹介します。
千年以上の歴史のある伝統技法
塩沢紬は新潟県魚沼市塩沢で受け継がれてきた伝統技法です。
塩沢紬のような伝統技法が生まれたのは、この地方が豪雪地帯であることも関わっています。
塩沢紬が出来上がるまでには数十以上の細かい工程が必要であり、職人の忍耐と技術が必要になります。
塩沢地区は一年の半分は雪に閉ざされる豪雪地帯のため、長い冬の間の作業として受け継がれてきたのが塩沢紬という伝統技法だったのです。
塩沢には塩沢紬の他にも越後上布や本塩沢、夏塩沢という織物があります。
この地域は千年以上前の奈良時代にはすでに織物の技術が発達しており、当時の織物が正倉院にも収められています。
悠久の時を超えて今なお受け継がれている伝統技法は、他には類を見ない素晴らしいものです。
塩沢紬とはどのような織物?
塩沢紬の伝統技法とはどのようなものでしょうか?
塩沢紬の紬とは、絹糸に撚りをかけて丈夫な糸に仕上げ、織物にしたものを言います。
真っ直ぐな絹糸が取り出せないような屑繭をつぶして真綿にし、それから糸を紡ぎだすため太さが均一ではなく独特の風合いを持ちます。
伝統技法によって織られた塩沢紬はとても丈夫で、昔は野良着として親から子に数代に渡って受け継がれるものでした。
また、庶民が贅沢な絹の着物を着ることが禁じられていた時代では、同じ絹糸でも高価に見えない紬は唯一庶民が着れる絹の着物として人気を博しました。
そのため、現在でも紬は高価でありながらもフォーマルな場所では着用しないのが一般的です。
塩沢紬の伝統技法は、少しでも良いものを着たいという人々の熱意が守り続けてきたと言えます。
着物を愛する人の間で人気の高い塩沢紬
大島紬や結城紬と比べると、塩沢紬は知名度が高いとは言えません。
手がかかる伝統技法を用いるため高価な割に、目を引くような華やかさがあるわけでもありません。
しかし、実は塩沢紬は、着物を知る人なら誰もが認める逸品です。
2009年には塩沢紬の伝統技法はユネスコの無形文化財にも指定されています。
寒さ厳しい豪雪の中で生まれた塩沢紬は、渋い色調の地や紺地にかすり模様のものがほとんどです。
しかし、その色合いは長い冬に耐えながら力強く生きる塩沢の人々のように味のある深みがあり、長年着続けることでさらに風合いが増していきます。
昔ながらの伝統技法で丁寧に作られるため生産数が少なく、塩沢紬は幻の紬とも呼ばれています。